無資格で柔道整復師の施術を施し、全国健康保険協会静岡支部から療養費をだまし取ったとして、詐欺などの疑いで浜松中央署と県警生活保安課に逮捕された整骨院の元経営者の男(43)=浜松市西区舘山寺町=ら2人が約10年にわたり「名義貸し」による不正請求を繰り返していたことが25日、捜査関係者への取材で分かった。
長年にわたり審査機関が不正請求を見落としていたことを受け、静岡県警は同日までに、対策を検討するよう求める文書を静岡県と静岡、浜松両市に送った。今回の事件のような「名義貸し」による不正の可能性を念頭に、施術所に立ち入り調査をするなど再発防止策の実施を要望した。
県警によると、柔道整復師の資格を持たない男が患者に施術をしていたが、保険機関に提出する療養費の支給申請書には、施術者欄に知人の柔道整復師の女(46)=横浜市=の名前を記していた。2人が保険機関から不正に得ていた療養費は約1億1500万円に上るという。
捜査関係者によると、容疑者は調べに「柔道整復師の試験に受かるまでの一時的なつもりでやっていたが、続けるうちに罪悪感が薄れていった。ばれないと思っていた」と供述している。
■保険機関「不正発見は困難」 厚労省も「患者に頼るしか」
「まさか別人の名前が書いてあるとは」。男が経営していた整骨院から療養費の請求を受けた保険機関の関係者は驚きを隠さない。「女に資格があることを確認し、ほかに不備がなかったので審査を通した。書類上の審査だけで不正を見破るのは難しい」と打ち明ける。厚生労働省の担当者は「名義貸しの不正を想定しておらず、患者が気付くのに頼らざるを得ない」と現状を説明する。
柔道整復師の施術所の大半は、患者が施術を受けた際に自己負担分を窓口で支払い、施術者が療養費を保険者に請求する「受領委任」制度を利用している。都道府県国民健康保険団体連合会や全国健康保険協会支部の審査会が申請書の内容を確認しているが、負傷部位を変更して不正請求を繰り返す「部位転がし」ではないかどうかの確認が中心という。今回の事件は、保険機関から施術内容の確認を求めるアンケートを受けた患者が、施術者の名前が女性になっていることを不審に思い、警察に相談して発覚した。県警に「名義貸し」による不正の再発防止策の検討を要望された県と静岡、浜松両市は施術所を調査したり、指導したりする立場。事件を受け、実効性のある対策が求められている。
引用元:静岡新聞
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